新国立劇場 マンスリー・プロジェクト
「たっぷりシェイクスピア!」第2弾
『ヘンリー四世』のダイナミズム レポ
2016年11月23日 11時
講師:松岡和子先生
新国立劇場のマンスリープロジェクト「『ヘンリー四世』のダイナミズム」に行ってきました。
集合場所が楽屋口前で、地下のリハーサル室での講義とのこと。
普段入れないところに行けるのはちょっとドキドキです。
少しでも浦井くんを感じられるでしょうか。
新国立劇場の楽屋口に、浦井くんの出入り待ちかと思うような長蛇の列!
お稽古の始まりもそろそろなのか、若手の役者さんらしき人が入ってこられて、つい浦井くんの姿を探してしまう。
受付を済ませて楽屋口から奥へ案内される。
自販機が並ぶ小部屋がカフェエリア。
浦井くんもここを利用してるのかなぁ(妄想が広がる)
そして案内してくださっている方が歩きながらおもむろに
「ここがヘンリー四世の楽屋です」
な、なんですと~(;゜∇゜)??
ざわつく受講生。一気に体温が上がる!
ガラス張りになっていて通路が見渡せるので、やはり浦井くんを探してしまった私でした。
そして地下2階のリハーサル室へ。
新国立劇場のマンスリープロジェクトでもここまで奥に観客を入れたのは初めてだそうです!
貴重な経験をさせていただきました。
講座の中で印象に残った部分をお裾分け
物語の始まりのその前提として、父であるヘンリー四世のトラウマがこの物語のベースにある。
リチャード二世から半ば強引に王座を奪い取り即位したことに王はずっと囚われていて、台詞に何度もそれが出てくる。
(シェイクスピアが書いたリチャード二世の戯曲では、ヘンリー四世の意を汲む者に暗殺されたことになっていますが、史実は不明だということでした)
ヘンリー四世はその罪を洗い流すため十字軍を組んで聖地巡礼しようとするが、反乱蜂起のため遠征は叶わず。
結局最後亡くなるまで、そのトラウマが解消されない。
松岡先生に最初に舞台上演のためのシェイクスピアの翻訳を依頼してきたのは、演出家の串田和美さんだそうです。
「上演しているとわからないことがたくさん出てくる。シェイクスピアには聞けないけど松岡さんに聞ける」と言われた(確かに・笑)
稽古に立ち会ってみて、役者の声に乗って言葉が立ち上がってくるのがとてもスリリングだった。
シェイクスピアの本はセリフにト書きが埋め込まれている。
例えば「口答えするな」というセリフがあれば、相手が口答えをしようとしていたことがわかる。
また、よく稽古場で役者さん達から自分の役の台詞について
「さっきこう言っていたのに、後になって真逆の事を言ったりする。どういうことなんでしょう」と聞かれる。
以前はなんとか辻褄を合わせるような解釈を考えたりしたけれど、最近はこう言うことにしている。
「シェイクスピアに一貫性を求めてはダメ!」(受講生大爆笑)
矛盾する台詞がたくさん出てくるけれど、その時々の台詞は本気の言葉と捉えて演じればよい。
矛盾があってこそ、その人間の面白さが出てくるのではないかと。
ハル王子はフォールスタッフ達と放蕩の日々を過ごしつつ、後で冷たく突き放す。
また親しくしてバカをやりつつも、実は独白で「今はつきあってやっているだけだ」と言っている。
今は黒い雲に隠れているけれど、時が来れば(つまり即位する時が来れば)太陽のように輝く姿を見せる。自分の改心はそれまでの放蕩があるがゆえに更に輝いて見えるはずだ、と。
(小田島版第一部のP25~26)
「こわいですね~(^_^;)」と松岡先生。
でもその言葉はきっと建前で、フォールスタッフのことは本当に好きなハル。
葛藤している台詞なんだろうなと思いました。
一部の山場はハル王子とホットスパーの一騎討ちシーン
そのすぐ側で死んだふりをしていて、手柄を自分のものにしようとするフォールスタッフ。
フォールスタッフの性格を象徴するのが、彼の台詞に「if」がとてもたくさんあること。
全編通して100回以上「if」もしくはそれにあたる台詞があるそうで、言い訳の逃げ場、とりつくろいのために数多く使われているとのこと。
第五幕第一場の自問自答は特に性格が表れているかもしれません。
(小田島版第一部のP173~174)
第二部の山場はヘンリー四世の死とヘンリー五世の即位
でもその前に一度四世が病気になり、ハルがそれを死んだと勘違いして枕元にあった王冠を持ち出すシーンがあり、ハルの父に対する思いの深さが表れている。
(小田島版第二部のP159~160)
その後、怒った四世とハルが話し合い和解するシーンは深い感動がある。
そのシーンの王の台詞にも、いかに自分が紆余曲折の果てに王冠を得て、そのトラウマに苦しんでいたかが語られ、またハルにはその思いをさせたくない父の愛がこめられている。
その中で松岡先生がニヤリとした部分が「内政がやばい時は海外に兵を出せ。そうすれば過去の恨みの記憶が消える」というところ。
(小田島版第二部のP171)
「今の世の中でもそうでしょう、政治家は身が危ういとすぐ海外に気を向けさせて危険を回避する・・」って。
それを上に立つ者の心得として、シェイクスピアが書いていたのはすごい!って。
そしてラスト。
ヘンリー五世となったハルがフォールスタッフを見捨てる台詞。
バッサリと冷酷に切り捨てるようでいて、実はちゃんと生きられるように手当を与え、心を入れ換えた時はちゃんと登用の道を開いてやると言う。
冷徹な態度でありながら、わざとらしくなく温情を与える、とても難しい部分。
「きっと今浦井くんも苦しんでいると思います」とのことでした。
※小田島先生版の本のページは、私の手持ちの本を参照しています。
改定されて変更となっている場合がありますので、ご了承ください。
実際の公演の写真はこちらで見られます。
(ステージナタリーさんのサイトです)
新国立劇場 演劇『ヘンリー四世』PV
中嶋しゅうさん・・・・
渡辺徹さん・・・・
秋の交互上演、きっと側で見守っていてくださいますよね。
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